KPMG・クニエ創設の立役者が描く、原点回帰のピュアコンサル―全社員出資型ファームの挑戦に迫る/CEO勝俣利光インタビュー(1)
2025年05月15日 22:14
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ショーリ・ストラテジー&コンサルティング株式会社 CEO 勝俣利光様 インタビュー/KPMG・クニエ創設の立役者が描く、原点回帰のピュアコンサル―全社員出資型ファームの挑戦に迫る
----[アクシスコンサルティング社様HPの記事を全文掲載させていただいております] ---
コンサルティング業界の黎明期から最前線で活躍してきた勝俣利光様。KPMGコンサルティング日本法人の立ち上げから、ベリングポイント、クニエと大手ファームの経営者として組織を先導した経験を経て、2023年、新たな一歩を踏み出しました。本質志向のピュアなコンサルティングを追求する独立系ファーム、ショーリ・ストラテジー&コンサルティング株式会社の設立です。
同社は各分野の経験豊富な「マイスター」レベルのエース級コンサルタントが集まり、社員全員が株主となって経営者マインドを醸成。ピラミッド型ではなく「文鎮型」の組織構造で、変革の上流領域に特化した「王道のコンサル」を実践しています。
今回のインタビューでは、大手ファームが肥大化し二極化が進む業界において、コンサルティングの原点回帰を掲げる勝俣様の思いと、社会課題の難題にも真摯に向き合う新たなコンサルティングの姿について語っていただきました。
※2025年3月時点での内容です
大手ファーム数社の立ち上げを主導して来た勝俣氏が目指す、本質志向のコンサルティング
遠藤
まずは、これまでのご経歴についてお聞かせください。
勝俣様
私がコンサルティング業界に入ったのは、KPMGコンサルティングの日本法人立ち上げのタイミングでした。
当時のメンバーはわずか8名。社長と部長はいずれも外国籍で、マネジャー3名、シニアコンサルタント3名という構成でした。実質的にはマネジャーが会社の仕組み作りからプロジェクト運営まで担っていたのです。若いうちから、コンサルタントとしての現場経験に加え、会社経営の中核に深く関わる機会を得られたことは、私にとって大きな糧になったと思います。
その後、KPMGに十数年在籍する中でパートナーに昇格し、やがてアーサー・アンダーセンとの国際的な統合プロジェクトに携わることになります。当時、アンダーセンはエンロン事件の影響により解体の方向にあり、KPMGとの統合が進められていました。その過程で、一時的にべリングポイントというコンサルティングファームが立ち上がることになったのです。
べリングポイントでは、KPMGとアンダーセンのそれぞれの制度や業務プロセスを統合し、新たな組織運営の仕組みを構築するキーとなる役割を担いました。あわせて、グローバルの方針転換により、従来のソリューションカットから、インダストリーカットへの転換が進められ、日本では私が先陣を切ってインダストリーチームを立ち上げました。
最初に担当したのはハイテク業界でしたが、その後、プロセス産業、流通、小売、商社、エネルギーなど、さまざまな業種のリーダーを歴任し、ソリューションチームと連携しながら、新規顧客の開拓にも取り組みました。
この時期には、複数ソリューションを組み合わせて提案からデリバリーまで一貫して提供する経験を重ねると共に、アンダーセンが有していた経営の仕組みやガバナンスも吸収でき、経営面での視座が大きく広がった実感があります。最終的に組織は約1,300名規模に拡大し、私は常務執行役員として全体を統括する立場となり、大手コンサル会社の経営に携わる貴重な経験ができたと感じています。
その後、ベリングポイントの解体に伴い、日本法人がPwCに売却されることになったタイミングで、私はKPMG、ベリングポイントの流れから身を引きました。そんな折、NTTグループから声がかかり、新たなコンサルティングファーム「クニエ」の設立を主導することになります。
クニエは、親会社がIT企業ということもあり、コンサルティングファームとしての仕組みや文化はまったく存在しないゼロからのスタート。だからこそ、制約のない環境で、自分が理想と考える“コンサルティングファームの型”を1から設計できたのは非常に貴重な機会でした。制度設計、ソリューション開発、他社からのリーダー招聘、新卒採用までを手がけ最終的に組織は1300名規模にまで成長。当初掲げていた「10年で1,000名」という目標も達成できました。
こうした経験を経て、自分の中で「理想のコンサルティングファームとは何か」が明確になっていったのです。そして、その理想を完全に自由なかたちで実現する場として、親会社や出資元の制約を持たない独立系ファームを、志ある仲間たちと共に立ち上げたのがショーリ・ストラテジー&コンサルティング株式会社です。
二極化が進むコンサル業界。王道のコンサルをもう1度
遠藤
コンサルティング業界の黎明期から数多くの立ち上げに関わっていらっしゃいますが、勝俣様が考える“理想のコンサルティングファーム”とはどのようなものなのでしょうか。
勝俣様
私が考える理想のコンサルティングファームとは、課題の本質に向き合い価値を生み出すプロフェッショナルが集う場です。近年、コンサル業界ではどうしても大規模案件に偏重する傾向がありますが、プロジェクトの規模は小さくても、クライアントにとって本質的で、かつ難度の高い改革テーマはたくさんある。そうした案件に誠実に取り組むスタイルこそ、コンサルティングの“原点”であり“王道”だと思うのです。
もちろん、コンサルティングファームにはいろいろなタイプがあって良いと思いますし、私どもの目指す姿が唯一の正解だとは考えていません。ただ、ここ10年ほど業界の構造変化を見てきた中で、「コンサルをやりたい」と純粋な志を持って入ってきた人たちが、そうした思いを発揮しづらくなっていると感じる場面が増えましたね。
遠藤
なぜ、そうした変化が起こっているのでしょう。
勝俣様
コンサルティング業界の“二極化”が背景にあると考えています。
1つは、大手コンサルティングファームの肥大化です。かつてコンサルティングの中心だった戦略や組織・業務改革といった領域に加えて、クラウドやDXの浸透により、IT実装やBPOのような領域まで担うようになり、現在、IT業界を丸ごと取り込むような構造になっています。
これは技術進化に伴う自然な流れですが、結果としてプロジェクトの規模や売り上げが重視される傾向が強まり、ピュアなコンサルティングに本気で取り組みたい人たちが社内で主流になりにくくなっているのも事実です。
もう1つは、新興の独立系ファームの台頭です。若くして起業する方が増えており、それ自体は素晴らしい流れでもあります。ただその一方で、急成長を目指すあまり大量採用や派遣型のスタイルに寄ってしまい、コンサルタントとしての専門性や育成環境が十分でないケースも少なくありません。結果として、プロジェクトの中で「人を貸すビジネス」になってしまい、コンサルタントとして本質的な課題に深く関われない状況も見受けられます。
遠藤
ピュアなコンサルティングにこだわる御社ですが、どういった体制でチームを構成されているのでしょうか。
勝俣様
私どものファームでは、経験豊富なエース級のコンサルタントが「共同出資者」というかたちで集まっています。採用ではなく、“創業メンバー”として集い、共に会社をつくるというスタンスです。こうしたメンバーが管理者としてではなく、若手と一緒に現場に立ち、席を並べてプロジェクトを進めながら、知見や技術を直接伝えていく。だからこそ、若手にとっても密度の高い学びが得られ、早期に成長できる環境が整っているのです。
遠藤
具体的にどのようなテーマに取り組まれているのでしょうか。
勝俣様
たとえば、経営戦略、新規事業の立ち上げや事業再編、業務改革の構想と実行支援、アナリティクス/AI活用戦略、データドリブン経営に向けた基盤構築といったテーマに取り組んでいます。
ITの実装フェーズは、基本的に他社パートナーと連携して進める方針です。私ども自身は、クライアントの構想段階から寄り添い、変革の上流部分に深く入り込むことに特化しています。
遠藤
御社では、収益性だけでは測れないような“難度の高い事業”にも積極的に取り組まれている印象を受けますが、そうしたテーマに挑む背景には、どのようなお考えがあるのでしょうか。
勝俣様
一言で言えば、「社会にとって意味のある課題に取り組む」ことです。大企業の改革だけではなく、社会課題である少子高齢化や地方創生など、日本にとって本当に重要なテーマにも取り組みます。
こうした領域は、収益性の観点から大手ファームはなかなか踏み込みにくい分野であり、行政やNPOの手だけでは限界がある。だからこそ、私どものようなファームがプロフェッショナルとして支援することに大きな意義があると考えています。また、こうしたプロジェクトに携わること自体が、メンバーの「仕事への誇り」や「社会貢献実感」につながるのだと思います。
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